1970年代のアポロ計画以来となる有人月面探査に向け、NASA(アメリカ航空宇宙局)が主導する「アルテミス計画」が具体性を帯びています。この計画は、月面への持続的な到達と、将来的な火星探査のための拠点構築を目的としています。現在は無人試験を終え、宇宙飛行士が搭乗して月軌道を飛行する「アルテミス2」の準備段階にあります。2026年時点のロードマップでは、打ち上げに向けたロケットの最終調整と、国際的な協力体制の構築が焦点となっています。
今回の計画は、米国一国によるプロジェクトではなく、日本を含む複数の国が参加する国際協力枠組みである点が特徴です。過去の探査が「到達」を重視していたのに対し、アルテミス計画は「滞在」と「資源活用」に重きを置いています。

画像提供: NASA/Aubrey Gemignani
アルテミス2の打ち上げとミッションの構成
「アルテミス2」は、新型ロケット「SLS(スペース・ローンチ・システム)」と宇宙船「オリオン」を使用し、有人で月周回軌道を目指すミッションです。すでに実施された無人のアルテミス1では、機体の健全性と再突入時の耐熱性能が確認されました。これを受け、アルテミス2では実際に人間が搭乗し、生命維持装置の作動状況や深宇宙での運用能力を実証します。
打ち上げに向けたカウントダウンは、機体の技術的課題や天候条件を慎重に見極めながら進められています。このミッションが成功すれば、その次の段階として、再び人類が月面に降り立つ「アルテミス3」へと移行します。これら一連のプロセスは、単なる記録更新ではなく、月面での経済活動や科学調査を継続的に行うためのインフラ検証としての側面を持っています。

2026年2月1日、ケネディ宇宙センター。発射台に待機するアルテミス2号と、その背後に昇る月。画像提供: NASA/Ben Smegelsky
日本が担う「有人プレッシャライズド・ローバー」の供給日本はこの計画に対し、技術提供を通じて深く関与しています。JAXAとトヨタ自動車が共同開発している「有人プレッシャライズド・ローバー」は、計画の成否を左右する重要な要素の一つです。これは、宇宙飛行士が船内で宇宙服を脱いで長期間生活しながら、月面を移動できる機能を備えています。月面は昼夜の温度差が激しく、放射線量も多いため、高い密閉性と耐久性が求められます。
日本が得意とする燃料電池技術や自動運転技術が、この車両の開発に活用されています。NASA側も、月面での広範囲な調査には移動手段が不可欠であるとして、日本の担当分野に高い実用性を求めています。車両の提供以外にも、日本は月軌道ゲートウェイへの物資補給や居住棟の機器開発を受け持っており、プロジェクトの主要パートナーとしての地位を占めています。
月面着陸から持続的な拠点形成へアルテミス計画の最終的な目標は、月面に人が常駐できる環境を整えることです。これには、月の南極付近に存在するとされる氷(水資源)の採取と活用が含まれます。水を水素と酸素に分解できれば、ロケットの燃料や呼吸用の酸素として現地調達が可能になり、地球からの輸送コストを大幅に削減できる計算です。
今後の焦点は、有人月面着陸の実施時期と、それに続く基地建設のスケジュールに移ります。2020年代後半にかけて、民間企業のロケット開発と国家プロジェクトが並行して進むことで、月へのアクセスはより定常的なものに変化していく見通しです。日本を含む参加各国は、それぞれの得意分野を分担することで、単独では困難な長期的な宇宙探査の基盤を作ろうとしています。





















