
かつて、卒業旅行や夏休みに気軽に海外へ出かけていた日々は、もはや遠い昔のことのように感じられます。
記録的な円安は、若者たちから「世界を見る機会」を奪い去ろうとしています。
ハワイでハンバーガーを食べれば1個4,000円、ニューヨークの安宿でさえ1泊3万円。
そんな信じられないようなニュースが流れるたび、多くの人が「もう海外なんて無理だ」と心を閉ざしてしまいます。
1ドル100円前後だった時代を知る世代にとって、今の為替レートはもはや異次元の数字です。
留学を計画していた学生たちは、予算の都合で期間を短縮したり、行き先を物価の安い国へ変更したりと、人生の選択肢を狭めざるを得ない状況に追い込まれています。
その一方で、日本の街中には外国人観光客が溢れかえっています。
彼らにとって、今の日本は「何でも安くて高品質なパラダイス」です。
高級ブランド店に並び、数万円の「インバウンド丼」を笑顔で食べる観光客の傍らで、日本人はコンビニの弁当でさえ高いと感じて躊躇する。
この奇妙で残酷なコントラストは、日本という国が世界の中で相対的に貧しくなってしまった現実を、これ以上ないほど鮮明に映し出しています。
かつては「爆買い」をする側だった日本人が、今では自国で「安売り」されているサービスを眺める側になってしまった。
この自尊心の傷つきは、数字上の不況よりも深い影を社会に落としています。
若者たちの間では、「出稼ぎ」という言葉が現実味を帯びて語られ始めました。
日本で働くよりも、オーストラリアやカナダでアルバイトをした方が、数倍もの貯金ができる。
そんな成功体験がSNSで拡散され、優秀な人材や意欲のある若者が次々と国外へと流出しています。
彼らは日本が嫌いなわけではありません。
ただ、この国にいても明るい未来が描けない、頑張っても生活が豊かにならないという閉塞感に耐えかねているのです。
円安は、単に旅行に行けなくなるという問題ではなく、この国の未来を担う世代の希望を、根底から揺さぶり続けています。
「安い国、日本」という現実を受け入れることは、私たちにとってあまりにも重い課題となっています。

















































